2026年08月25日
災害に強いまちづくりへ ― 高山市が注目した「系統用蓄電池」という新たな備え
近年、地震や豪雨、台風などの自然災害が頻発する中、自治体にとって重要な課題となっているのが「停電への備え」です。
避難所の運営や情報発信、通信手段の確保など、災害時には電力が欠かせません。しかし、大規模停電が発生すると、私たちの日常生活はもちろん、行政サービスにも大きな影響が及びます。
そんな中、新たな防災インフラとして注目されているのが「系統用蓄電池」です。
2026年6月2日、岐阜県高山市は日本蓄電池株式会社と「災害時における系統用蓄電池からの電力供給に関する協定」を締結しました。
平時は再生可能エネルギーの普及を支え、非常時には地域へ電力を供給する――。
この取り組みは、これからの防災のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
そもそも「系統用蓄電池」とは?
系統用蓄電池とは、電力会社の送配電網(電力系統)に直接接続される大規模な蓄電設備のことです。
電気が余っている時間帯に充電し、需要が高まる時間帯に放電することで、電力の需給バランスを調整します。
特に近年急速に普及している太陽光発電や風力発電は、天候によって発電量が変動するため、その調整役として蓄電池の重要性が高まっています。
系統用蓄電池の主な役割
✓ 電力需給の安定化
✓ 再生可能エネルギーの有効活用
✓ 電力市場での調整力提供
✓ 停電リスクの軽減
✓ 災害時の非常用電源
平時はエネルギーインフラとして機能し、非常時には防災設備として活躍するのが大きな特徴です。
災害時には「巨大な非常用電源」に

今回の協定で注目されているのは、災害時の活用方法です。
系統用蓄電所には外部へ電力を供給できる設備が備えられており、停電発生時には有資格者による操作によって蓄電した電力を供給できます。
例えば、
- スマートフォンの充電
- ノートパソコンの利用
- ポータブル電源への充電
- 災害情報の取得
- 通信手段の確保
などに活用することが可能です。
災害時には「電気があるかどうか」が生活の安心感を大きく左右します。
そうした意味でも、地域内に大容量の蓄電設備が存在することは大きな安心材料となります。
約470世帯を72時間支える供給力
今回、日本蓄電池株式会社が高山市内で計画している蓄電所の容量は約8MWh(8,146kWh)。
これは一般家庭の非常用蓄電池とは比較にならない規模です。
どのくらいの電力なの?
災害時に2人世帯が72時間(3日間)生活するために必要な電力量は約17kWhとされています。
この計算でいくと、
約470世帯分の電力を72時間供給できる規模
となります。
災害発生直後の重要な72時間を支える電源として、非常に高いポテンシャルを持っていることが分かります。
再エネ拡大と防災強化を同時に実現

現在、日本の電力供給の多くは火力発電に依存しています。
一方で、2050年カーボンニュートラル実現に向けては、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大が不可欠です。
しかし、再エネの普及には課題もあります。
再エネ普及の課題
- 発電量が天候に左右される
- 電力供給が不安定になりやすい
- 余剰電力の有効活用が必要
こうした課題を解決する存在として、系統用蓄電池への期待が高まっています。
つまり、
「脱炭素」と「防災」の両方に貢献できるインフラ
として注目されているのです。
高山市モデルが示す新たな地域防災の形
今回の協定は単なる企業誘致ではありません。
地域に設置されるエネルギーインフラを、平時だけでなく災害時にも活用するという新しい発想です。
この取り組みのメリット
自治体
- 防災力の向上
- 避難所機能の強化
- 災害対応力の向上
住民
- 停電時の安心感
- 通信手段の確保
- 生活インフラ維持
事業者
- 再エネ普及への貢献
- 地域との共生
- 社会的価値の向上
行政・企業・地域住民の三者がメリットを共有できるモデルとして注目されています。
まとめ
系統用蓄電池は、これまで「電力市場の設備」というイメージが強い存在でした。
しかし今後は、
平時には
✓ 再生可能エネルギーの安定利用を支える
非常時には
✓ 地域住民を支える非常用電源となる
という二つの役割を担う重要な社会インフラへと進化していくでしょう。
高山市と日本蓄電池株式会社による今回の協定は、「脱炭素」と「防災」を同時に実現する先進的な取り組みとして、今後全国の自治体からも注目を集めることになりそうです。
平時はクリーンエネルギーを支え、非常時には地域の命綱となる――。
そんな新しいエネルギーインフラの姿が、私たちの暮らしのすぐそばまで来ています。