コラム

2026年08月19日

脱炭素社会を支える「系統用蓄電池」投資とは?~英国事例から学ぶ成長市場の可能性とリスク~

再生可能エネルギーの導入拡大が進むなか、電力業界で新たな注目を集めているのが「系統用蓄電池」です。

太陽光発電や風力発電は、天候によって発電量が大きく変動します。そのため、発電量が余る時間帯には電力を蓄え、不足する時間帯に供給する仕組みが欠かせません。

そこで期待されているのが系統用蓄電池です。

近年では、単なるエネルギー設備としてだけでなく、投資対象としても注目度が高まっています。今回は、先行する英国市場の事例を参考にしながら、系統用蓄電池投資の特徴と将来性について考えてみたいと思います。

なぜ今、系統用蓄電池が必要なのか

日本では再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、以下のような課題が顕在化しています。

  • 太陽光発電の出力抑制
  • 電力需給の不安定化
  • 夏季・冬季の節電要請
  • 再エネの有効活用不足

系統用蓄電池は、こうした課題を解決するための重要なインフラとして位置付けられています。

余剰電力を蓄え、必要なタイミングで放電することで、電力系統全体の安定化に貢献します。

脱炭素社会の実現に向けて、その重要性は今後さらに高まると考えられています。

太陽光発電投資との大きな違い

投資家が理解しておくべきポイントは、系統用蓄電池と太陽光発電では収益構造が大きく異なることです。

太陽光発電

  • FITやPPAなど長期契約が中心
  • 収益予測が比較的容易
  • 安定収入型の投資

系統用蓄電池

  • 卸電力市場
  • 需給調整市場
  • 容量市場

などの市場取引が主な収益源となります。

つまり、市場価格の変動によって収益が左右されるため、太陽光発電よりも高いリスクを伴う一方で、高い収益機会も期待できるのです。

英国市場が示す成長性

シャード(イギリスロンドン)高層ビル

系統用蓄電池の導入が進む英国では、蓄電池を対象とした上場ファンドが2018年以降相次いで誕生しています。

これらのファンドは、

  • 株式市場の主要指数
  • 再生可能エネルギーファンド

と比較しても高いパフォーマンスを示してきました。

背景には、

  • 再エネ導入拡大
  • 電力価格変動の増加
  • 系統安定化ニーズの高まり

があります。

今後も蓄電池市場そのものの拡大が見込まれており、多くの投資家が成長分野として注目しています。

高リターンの裏側にある「慎重な運用」

興味深いのは、英国の系統用蓄電池ファンドが比較的保守的な財務戦略を採用している点です。

一般的な再エネファンドでは借入金(レバレッジ)を活用して投資効率を高めるケースが多く見られます。

しかし系統用蓄電池ファンドでは、

  • 借入比率を低く抑える
  • 財務リスクを抑制する
  • 市場変動に備える

といった慎重な姿勢が目立ちます。

これは運営側が、収益機会の大きさと同時に市場変動リスクも十分認識していることを示しています。

日本市場への示唆

英国の事例から見えてくるのは、「再エネ」と「蓄電池」の補完関係です。

再エネ事業

  • 収益が比較的安定
  • 投資案件の獲得競争が激化

蓄電池事業

  • 成長余地が大きい
  • 市場リスクが高い

両者の特徴は対照的です。

そのため、投資家や事業者にとっては、

「安定収益の再エネ」
+
「成長性の高い蓄電池」

を組み合わせたポートフォリオを構築することが、有効な戦略になる可能性があります。

これからの投資家に求められる視点

系統用蓄電池は、脱炭素社会を支える重要な社会インフラです。

一方で、FITに支えられた従来の太陽光発電投資とは異なり、市場価格や制度変更の影響を大きく受ける投資対象でもあります。

投資を検討する際は、

✓ 収益源はどの市場なのか

✓ 市場価格変動への耐性はあるか

✓ レバレッジは適切か

✓ 長期的な事業戦略は明確か

といった点を確認することが重要です。

まとめ

系統用蓄電池は、再生可能エネルギー時代に欠かせないインフラとして今後ますます重要性を増していくでしょう。

英国市場の事例が示すように、高い成長性と収益機会を秘める一方で、市場変動リスクも抱える投資対象です。

だからこそ、投資家には「高利回り」だけを見るのではなく、リスクとリターンのバランスを理解した上で判断する視点が求められます。

脱炭素社会の実現を支える次世代インフラへの投資。その可能性を正しく理解することが、これからの資産形成における大きな鍵となるかもしれません。

 

 

この記事を書いた人

系統用蓄電池情報局 編集部

系統用蓄電池・電力市場・再生可能エネルギーを専門とする編集チームです。最新の市場動向から基礎知識まで、わかりやすく発信しています。